【概要】
「一泊の箱根」というタイトルはとても象徴的です。大正時代、鉄道や道路の発展にともない、それまで少数の富裕層が主に楽しんでいた温泉地での行楽に、より広い階層の人々が参与できるようになりました。そうした新しい客層は、できたばかりの鉄道を利用し比較的短期間に旅行を済ませます。「一泊の箱根」という表現は、新しい客層たりうる人々に届くキャッチフレーズだったのでしょう。そして、こうした絵葉書が作られることそのものも、旅の大衆化と無関係ではありません。また絵葉書に写る駅前の売店なども、そうした新しい時代に脚光を浴びるシステムだったのかも、と思います。
絵葉書に注目すると、東海道線小田原駅に到着後、箱根登山鉄道に乗り継ぎ、宿で温泉につかり、公園や湖の風光を楽しむという旅の流れを上手く活かした構成になっています。旅の行程をイメージさせ、旅行に行きたい気分にさせたり、旅の思い出を惹起させる(そしてもう一度旅したくなる)ような狙いがあったのでしょう。
【内容】包紙1、絵葉書7
酒匂川鉄橋 相州小田原駅に向つて進行中の車両/相州小田原ステーション/御塔坂 湯本行電車の中より見たる箱根二子山/相州箱根宮の下全景/強羅公園 大涌谷/箱根 姥子温泉場 千石温泉場/箱根芦の湯温泉場/箱根芦の湖の逆富士
※恥ずかしながら箱根は逗留したことがなく、Google マップで探検しながら想定される行程順に並べてみました。
【撮影・作成年代推定】大正7(1918)年~昭和8(1933)年
通信欄の罫線が宛名面の2分の1の位置にある点、右から「郵便はかき」の表記から判断。
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