東洋一の川口荷札 建築記念ゑはがき

企業系
川口荷札株式会社工場 其三

【概要】

川口荷札は、明治37(1904)年に歳弘松人氏が岩手県盛岡市八日町(現本町通)に「川口屋荷札店」を創業したことに始まります。大正3(1914)年に絵葉書の通り「川口荷札」に社名変更、そして昭和40(1965)年に川口印刷工業とさらに名を変え、時代を乗り越え現在も営業される歴史ある印刷会社です。

物流が活発になるにつれ、荷物の情報を担保する荷札の重要性は増していきます。そして、荷札は使い回しもできないでしょうから大量生産され需要に応じていたのでしょう。この絵葉書は、川口荷札が大正10(1921)年に工場を新築したことの挨拶として作成されたようです。荷物を送る人々の経済活動が活発になることで荷札の売れ行きも好調になりますから、お客さんへの日頃の感謝が述べられています。

絵葉書を見ますと、社屋や工場の紹介になっており、営業部と工場部門とが紹介され、工場部門では荷札ができるまでの一連の流れを確認できそうです。ただ私に全然知識がなく各工程でどんなことをしているのかあまりよくわかりません。こうしてネットにアップして共有することで、詳しい人や関心のある人の目に留まり、物流を支える荷札の歴史の解明の一助になれば良いなと思っています。

【内容】包紙1、挨拶状1、絵葉書5

川口荷札株式会社全景/川口荷札株式会社工場 営業部/川口荷札株式会社工場 其一〜其三

【挨拶状翻刻】

謹啓新緑の候、華客各位益々御清栄の段、奉慶賀候、降而弊社儀明治三十七年創業以来各位の甚大なる御引立を蒙候、御蔭様を以て業務逐日繁栄を来し候事、一に各位の異常なる御発展の余沢と居常感謝罷在候次第改めて御礼申上候、昨春三月従来不便に苦み候工場営業所の新築に着手し同年十一月竣成を告げ、既に同所に一切の業務を移転致し候、就ては店務其他に一層の改善を相加へ誠心誠意御高需に相応し可申候間、倍旧の御愛顧賜はり度く奉悃願候

先は御礼旁々移転御挨拶迄如此申上候 敬具

盛岡市日影門 川口荷札株式会社 大正十年五月 専務取締役 歳弘松人

【現代語試訳】

謹啓新緑の候、お客様各位におかれましては益々ご清栄のことをお慶び申し上げます。さて弊社においては明治37年の創業以来皆様の甚大なるお引き立てをいただき、お蔭様で業務は日にまし繁栄してまいりましたことは、ひとえに皆様の尋常ならざるご発展の余波と日頃から感謝いたしましておりますこと改めましてお礼申し上げます。昨春三月、従来不便に苦しんでおりました工場・営業所の新築に着手し、同年十一月竣成を告げ既に同所に一切の業務を移転致しました。つきましては業務そのほかに一層の改善を加えまして誠心誠意皆様のご要望にお応えしていく所存でございますので、なお一層のご愛顧をたまわりたくお願い申し上げます。

まずはお礼かたがた移転のご挨拶までこのように申し上げます。

【作成・撮影時期】大正10(1921)年5月

【作成】川口荷札

コメント