【概要】
大阪の名所を古き佳き大阪弁で紹介した原色版絵葉書です。地域の特色を地域の言葉で紹介することは、現在ではよく見かけるようになっていると思います。大阪はいち早くこれに取り組んでいたことがわかります。
今でも大阪弁やそれを含む関西弁は方言として話者が多く、そして、様々な作品でそのイメージが形成されている状況にあります。100年ほど前の時代にあっても、「話者の多さ」「大阪の持つイメージ」が充分にあり、こうした絵葉書が作成できたのでしょう。名所を方言で紹介できることはとても素敵で、重要なことだと考えています。
せっかくなので文字で起こしてみようと思います!
【内容】14枚 原色版
・通天閣(新世界)
こヽらへんが新世界だす。南大阪一番の歓楽地帯だす。活動写真館、寄席、喰物屋が軒をならべて賑やかなことだす。新世界のまんなかに此ノ通天閣がゆうと高う二百尺も空へ突き出てます エレベーターがありまつさかいしんどいことおまへん 一目千里と書いておまっせ
・大阪城公園
御大典記念事業に大阪市民の寄附で出来た天守閣だす。城内は公園になってまんね、外壕の松の緑の間にヽヽ金鯱がきらヽヽ光ってきれいにおまっせ。
・大阪ビルディング
商工業地の大阪には随分立派な建物がおますけど此の大阪ビルディングはその中でも一、二を降りまへんな。中には何百と言ふ事務所や商品がぎやうさんおまっせ。
・北浜付近
立派な建物がぎやうさんならんでまっしゃろ。右側にあるのが株式取引所だす。日本一の堂島米相場の。米穀取引所や百貨店三越もこヽからすぐだっせ
・大阪府庁
さすが大阪だんな。商工業では日本一を誇る大阪のお役所だけあって立派なもんだっしゃろ。総工費が四百万円近くもかヽってまんね。向ひ側の豪壮な大阪城との対象も面白ろおまっせ。
・難波橋
水の公園中の島まん中に土佐堀川と堂島川に架けた難波橋だす。南詰には大阪の一等地北浜街を控へてます。全部石で出来てまんね。立派なことは大阪一番だんな。
・大阪駅
そらこれが大大阪の表玄関大阪駅だす。さすが交通上では日本中では一、二を争ふ大阪だけあって一日中のお客だけでも中々大変なもんだっせ。そやさかい往来の電車自動車の雑沓で賑やかなことだっせ。
・堂島ビルディング
堂島川の川べりに面してメインストリートの御堂筋にある堂島ビルディングだす 中にはホテルもおまっせ。大阪駅にも近うおますし、ながめもよろしおまっせ。こんど此の前へ地下鉄道が通るようになりまんね。
・大軌停車場
煙の都の大阪には大きな公園や娯楽場がおまへんさかい大阪人は近郊の遊覧地を極度に利用しまんな。奈良もその一つだす 日帰りの清遊にはもも〔衍カ〕ってこいだんな。ここから奈良迄たった四十分位で行けまっせ
・公会堂及中ノ島公園
水の都の大阪にはこんなえヽところがおます。両側に流れるきれいな水にはさまれてる中之島には中之島公園、公会堂、図書館、支庁、その他色々な建物がおます。水に恵まれた大阪市だんな。
・築港桟橋
東洋のニューヨークと言はれる大阪の海の玄関だす。この桟橋は長さが四丁半もあって港内も中々深うおまっさかい一万噸からの船でも軍艦でも皆んな横付だす
・大阪支庁
この大阪市庁は中の島におます。大阪駅前から難波へ走るメイン・ストリートに面して中々立派なもんだす 大正九年に三年越しに出来上った石造の白亜の大建築だす。
・四天王寺
こヽは昔聖徳太子さんが建てはった名高い仏法最初の天王寺さんだす。中へはいって見なはれ 結構な所がぎやうさんおます。あの五重の塔へも登れまっせ。春と秋のお彼岸には善男善女でえらい人出だっせ。
・堺筋
この通りが堺筋だす。大阪の交通の動脈と言はれる丈けあって電車、自動車、自転車、そのほかの乗物が次から次へ走って来まっさかいちょっと横切れまへん。そやけど所々には交通巡査が立ってゐやはりまっさかい一つも混雑しまへん。
【作成・撮影年代】昭和8(1933)年ころ
説明文に「こんど此の前へ地下鉄道が通るようになりまんね。」とあり、大阪の市営地下鉄の開業年が昭和8年になるため。
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